人的資本経営
読み: しんてきしほんけいえい別名: Human Capital Management、人的資本、人材戦略、人材版伊藤レポート
人材を価値を生む資本と捉え、その力を引き出して企業価値の向上につなげる経営の考え方です。開示との違いと、研修の位置づけを解説します。
人的資本経営は、人材を「コスト」ではなく価値を生み出す資本として捉え、 その力を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値の向上につなげる経営の考え方です。
人材への支出を「削るべき費用」ではなく「将来のための投資」と見る点が、 これまでの人事管理との大きな違いです。
経営戦略と人材戦略をつなぐ
人的資本経営で重視されるのは、経営戦略と人材戦略を結びつけることです。 「事業をこう変えたい」という方針があって、 そのために「どんな人材が、いつまでに、どれだけ必要か」を考えます。
経済産業省がまとめた報告書(いわゆる「人材版伊藤レポート」)では、 次のような観点が示されています。
- 経営戦略と人材戦略を連動させる
- 目指す姿と現状の差を、数字でつかむ
- 人材戦略を企業文化として根づかせる
あわせて、人材の構成の見直し、多様性の確保、リスキリング、 従業員エンゲージメント、時間や場所にとらわれない働き方などが、 多くの企業に共通する取り組みの要素として挙げられています。
人的資本開示との違い
| 人的資本経営 | 人的資本開示 | |
|---|---|---|
| 何をするか | 人材への投資で企業価値を高める | 方針や指標を社外に示す |
| 主な相手 | 社内(経営・人事・現場) | 投資家などの社外 |
人的資本開示は、人的資本経営の取り組みを 外に向けて説明する手段の1つです。開示のために数字を集めることが目的になると、 本来の「人材の力を引き出す」取り組みが後回しになりがちです。
研修・人材育成の位置づけ
研修は、人材への投資の中でも分かりやすいものです。 人的資本経営の考え方では、研修を次のように見直すことになります。
事業に必要なスキルから逆算する 例年どおりの研修を並べるのではなく、事業の方針から必要なスキルを洗い出し、 研修ニーズ分析を通じて研修を決めます。
効果を確かめる 研修を実施したかどうかだけでなく、行動や成果がどう変わったかを確かめます (研修の効果測定)。
本人の学びを支える 会社が割り当てる研修に加えて、社員が自分で選んで学ぶ機会を用意します (自律学習、キャリア自律)。
進めるうえでの注意
数字だけを追わない 研修時間や受講者数は分かりやすい指標ですが、増やすこと自体が目的になると、 受け身の受講が増えるだけになりかねません。指標は、目指す姿に近づいているかを確かめるために使います。
人事だけの取り組みにしない 経営層が方針を示し、現場の管理職が日々の育成を担わなければ、 人事部門が仕組みを作っても定着しません。
